モノって、不思議なもの。 はじめは実用の品として作られた はずなのに いつしか暮らしから忘れ去られ、 使われなくなる時がやってきます。 でも、それまで当たり前のように ひとつだった「用」の役割から離れ、 どこか肩の荷を下ろして 楽になったモノたちが、 とても純粋な物質の表現を 見せてくれることがあります。 それは、作られたときに与えられた 意味や目的から解放され、 そこにただ物質として 存在する姿です。 この無意味で、抽象的な、 まるで宇宙のカケラのような モノたちの佇まい。 それらは、遠い記憶の糸口を ゆっくりと解きほぐし、 なぜか澄みきった静かな感情を、 僕たちの心の奥に ひろげてくれるのです。 三谷龍ニ |